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「リュウ&コウシリーズ(BL・完結)」
白い記憶

白い記憶4~銀の夜~【前編】

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【前 編】


真っ白な雪がすべてを覆い尽くしていた。

ビル街の鋭角なフォルムも、街角の街路樹も、信号も、ショップの看板も、すべてがまあるく優しい輪郭に包まれている。

「寒くない、リュウ君?」

窓辺に座り込み、飽きもせずに降り続く雪を眺めているリュウの背中に、トゥエンは話しかけた。

「はい」

端正な、哀しいほど端正な彼の返事は、けれど、背中を向けたまま。
ただひたすらに灰色の空からこぼたれてくる雲の破片をみつめる彼。

床からのぬくもりで部屋の中は温かいとはいえ、冷たいガラスに額をくっつけんばかりにして窓の外を見ているリュウは、冷気にさらされている。
トゥエンは薄い毛布を寝室のクロゼットから引っ張り出してくると、リュウの肩にそっと載せた。
その感触に、リュウがふと視線を上げる。
雪に乱反射して部屋に注いでくる光の中で、彼の顔は蒼いほどに白い。
ほんの少しだけ、いぶかしげに寄せられた眉の下、瞳に宿る光が雪を映してほの明るい。

「ほんとに寒くない?」

もう一度同じ問いかけ。

「ありがとうございます、大丈夫です」
「そぉ?」

重ねて尋ねると、ふと彼が微笑んでうなずいた。

「トゥエンssi」
「なぁに?」
「雪が・・・、すべてが真っ白だ」
「そうね。久しぶりだわ、こんなに雪が降ったのを見るのは」
「久しぶり?」
「ええ。最近は雪が少なかったし」
「・・・僕は、初めてだ」

あまりに無邪気に発せられた言葉に、トゥエンの喉の奥がぐっと鳴る。
狼狽を隠そうとしている年上の女性をからかうように見て、それからまたリュウは外へと視線を動かした。

「ひょん?」
毛布の中からごそごそと小さなクンホが顔を出す。
彼は先ほどから、リュウの胡坐の上で猫のように丸くなって眠っていた。
目が覚めて、大好きなヒョンの顔を見上げている。

「ああ、ごめん。目が覚めちゃったか?
クンホ、雪だよ。まっしろだ。真っ白だよ」

リュウの視線を追いかけて、クンホもリュウの膝の上で体を伸ばして窓の外を眺める。

「まっしろ、だ~ね」
ちょっとだけ首をかしげながら、クンホはリュウに問いかける。
「そうだよ、真っ白だよ」
「まっしろ~」
「そう、真っ白だ」

リュウは満足げにつぶやくと、腕の中にいるクンホをそっと抱き寄せた。
目の前のガラスは外の冷気を孕んで冷たいけれど、クンホを抱いていれば暖かい。

昨夜から、リュウはジンウ夫婦のマンションに泊まりに来ていた。
夏の手術の後、秋には一度実家に戻っていたリュウだが、検査のためにソウルに戻っていた。
冬の寒さは免疫力の落ちているリュウには危険だと入院していたのだが、彼の希望で1泊の外泊が許された。
本当はヨンスの住まいに泊まる予定だったのだが、まだ赤ん坊の子どもが風邪をひいたとかで、うつる危険性があるとドクターストップがかかった。
リュウがかなり落胆したと聞き、ジンウが急きょ自分のところでよければと申し出て、昨日からリュウはトゥエンの羽の下にいる。

予定では夕方にジンウが病院へ送っていくことになっていたが、この雪の状況では外に出さない方がいいかもしれない。
そのジンウは、スタジオスタッフに急用ができて先ほど出かけていったばかりだ。
ついでにドクターとヨンスに連絡をとって、もう一泊させても大丈夫かどうかを確認することになっている。

「トゥエンssi。雪って、綺麗ですね」

そうつぶやく彼の横顔の方が美しいとトゥエンは思う。

昨夜、ジンウが連れて帰ってきた彼は、秋の入口に病院で会った時よりもよほど顔色も良くなっていた。
実家でのんびりと暮していたせいかとも思ったが、リュウはさほど口を開かないので実家の様子も根掘り葉堀り聞くことははばかられた。

ヨンスがちらりと言っていたことには、
「実家は、あいつにとっては少し息苦しいようだ。
両親や姉はもちろん、祖父母も、友人知人も、あいつにどう接していいのか迷っているみたいだし、あいつ自身もどうふるまえば周囲の人間が安心するのか分からない。
それでもね、『ソウルに帰りたい』と電話をもらったとき、正直言って驚いたね。
昔のあいつなら、多分、黙って耐えていたと思う。
でも、ま、素直に言ってくれた方が、こっちは楽でいいけれど」

うっそうとした記憶の森に迷い込んだリュウは、悲鳴を上げてヨンスに救いを求めた。
ヨンスは喜んで検査という名目をつけてリュウを引っ張り出してきた。
また実家に戻さなくてはならないが、今しばらくはリュウはこちらにいられる。

昨夜は、トゥエンの手料理をおいしそうに平らげ、クンホの相手を楽しげに勤める彼を見て安心はしたものの、早いうちにベッドの中に追い込んだ。
さすがに一緒に寝たがるクンホをひきはがしはしたが、今夜もゆっくりと眠らせてやれるものならそれに越したことはないと、姉というには年上の彼女は考えていた。

それにしても、雪。
風もないのに、花びらが舞うようにひらひらと揺らめきながら落ちてくる。
昨夜までは、時々ちらつくだけだったのに、一体どういう空の気まぐれか、今朝目覚めてみると辺りは一面に真っ白になっていて、リュウだけではなくジンウもトゥエンも、そしてクンホも驚いたのだ。


「雪が気に入った?」
「・・・はい。やまなければいいのに」
「それじゃ、困るわ。外にも行けなくて、クンホはストレスたまって叫んじゃうわよ」
「でも・・・」
「ん?」
「何もかもが雪に包まれて、真っ白だ。何も見えない。
僕・・・、僕だけじゃなくて、ほかの人もみんな、真っ白な記憶の中にいる」
「リュウ」
「雪に閉じ込められて、どこにも行けなくて、何も見えなくて、何も聞こえなくて。
僕一人じゃない」

彼は愉快そうにつぶやいた。
けれど、どこか苦痛の響きに気づいたのか、クンホがリュウにしがみつくと歌うようにつぶやいた。

「ひょ~ん。ゆ~き、まっしろ~」
「そうだよ、クンホ。真っ白だ。何も見えない」

小さなクンホとリュウは抱き合ったまま、窓の外を眺めている。
トゥエンも二人の視線を追いかけ、窓の外を眺める。

雪が絶え間なく舞い落ちては音もなく重なってゆく。
まるで色をもつすべてのものが汚れているかのように、すべてを覆い尽くし、眩いばかりの白に変える。
けれど、空を見上げれば、真っ白な雪を抱く空はうすねず色。
暗い不安の色から耐えきれないようにあふれこぼれてくる雪が理不尽なほど純粋な色であることを、トゥエンはリュウのために痛ましく思う。
せめてそれならば、空も真っ白であればいいのに。

「・・・リュウ君、雪が止んだら、ほんのちょっとだけ、先生にもヨンスにもジンウにも内緒で、外を歩いてみましょうか。
ほんのちょっとだけよ。
あなたに風邪なんか引かせたら、それこそ私、ヨンスに絞め殺されちゃうから」

リュウが彼女を見上げた。
その口元に微笑みが浮かんでいる。

「ほんとに?」
「ええ。ただし、本当にちょっとだけよ。
あったかくして、あなたにはジンのスノウブーツを貸してあげる。
クンホは雪だるまみたいにモコモコにして、一緒に歩いてみましょう」
「ゆきだるまぁ?」

クンホが耳ざとく聴きつけ、目を輝かせた。
最近、絵本で見つけた不可思議なフォルムの物体がことのほかお気に入りの彼は、それが「ゆきだるま」という名前であることを父親から教えてもらっていた。

「ゆ~きだるま、ゆ~きだるま」
「クンホはゆきだるまが好き?」
「ゆきだるま、すきぃ~」
「ヒョンとゆきだるまと、どっちが好き?」

唐突な問いかけに、きょとん、と、クンホが目を開いた。

あら・・・と、声には出さなかったが、トゥエンは意外に思う。
リュウが、幼い弟に選択を迫っている。
少なくともそんなことをする子ではなかったはずなのにと思うが、あくまでも彼の声音は朗らかだった。

「クンホ、どっち?」
「どっち?どぉ~っち~?」
「そうだよ、クンホ、ゆきだるまとヒョンとどっちが好き?」

トゥエンはその二人のやり取りを黙って見ていた。
クンホにとっては言葉遊びに過ぎないが、多分、リュウは本気でクンホに選択を迫っている。

ゆきだるまと自分と。

シチュエーションが違えば、あまりにばかばかしい滑稽な比べっこだが、リュウは本気だ。
クンホがリュウの問いかけの意味を分かっているのかどうかさえリュウにとっても曖昧だとは思うが、それでもリュウはクンホに問いかけている。

「クンホ、どっちが好き?」
「ひょん!」

クンホが高らかに宣言したのを、トゥエンはわが子ながら誇らしげに思った。
確かにクンホはリュウの気持ちを感じ取っている。
まだ本能的なものだろうけれど、この二人に揺らぎはない。

リュウはしばらくクンホの顔を見ていたが、やがて、その暖かな体を抱き寄せた。

「クンホ、一緒にゆきだるまを作ろう」
「ゆ~き、ゆ~きだるまぁ。ひょん、一緒」
「うん、そうだよ、クンホ、一緒にゆきだるまを作ろう」

トゥエンは二人のそばをそっと離れた。

何とも他愛ないやり取りだが、今のリュウには必要なのだろうと彼女は思う。

自己の再生・・・そんな意識は彼にはないだろう。
あまりにも茫漠としていて曖昧な自分という存在の輪郭を、リュウはひとつひとつたどっている。
ともすればぶれてしまう自意識と感情の軋轢に軋む心を抱きながら、何とか毎日を過ごしているのだろうと想像するが、トゥエンには見守るしかない。
せめて、彼が望むことを可能な限りかなえてやりたいと思うだけだ。

「ひょん、ゆきだるま~」
「ああ、本当だ。あれ、このゆきだるま、クンホに似ている」
「くん?」
「そうだよ、ほら、目が大きくて、かわいいだろ?」
「か~い~?」
「うん、かわいいよ、クンホは可愛い」
「か~い~、くんほ、か~い~?」

クンホはお気に入りの絵本をリュウの前に引っ張り出してきたようだ。
二人でページをめくりながら、楽しげにしゃべっている。

雪がやんだら…と、トゥエンは言ってしまったが、雪がやめばいいのか、やまない方がいいのか、実は自信がない。
どちらにしろ、今ひとときは二人の時間をそっとしておこうと、彼女はリビングから出ていった。


「ま~ま、ゆきだるま!!」
30分程、ベッドルームやゲストルームの掃除をしていると、クンホがぱたぱたと駆け込んできた。
「ん?なぁに?」
「ゆ~き、ゆきだるま」
クンホが嬉しげに告げる。
「雪がやんだの?」
「やんだの、ゆきだるま!ひょん、ゆきだるま」

トゥエンは傍らの窓を指でこすった。
指先からつつーっと雫がガラスを伝い落ち、その向こうに真っ白な世界が見えた。

「あら、ほんとね、やんだんだわ、雪」
「ま~ま、ゆきだるま!」
「クンホ、ゆきだるまはだめよ。
でも、ほんの少しだけ散歩しましょうね」

息子を抱き上げると、トゥエンはリビングに戻った。
リビングではリュウがベランダの前に立って外を眺めていたが、二人を振り返って朗らかに告げた。

「トゥエンssi。何も見えない世界を一緒に歩いてください」


マンションのエントランスに立つと、本当にいつもとは別世界になっていた。

エントランスからアプローチに降りる4段の階段こそ何とか雪まみれを免れているが、レンガ敷きのアプローチと道路の境目さえ分からない。
ジンウのレンジローバーは地下駐車場で休んでいるが、青空駐車場の車はすっぽりと雪に包まれ、まるで冬眠中の獣が並んで眠っているかのよう。
葉を落とした細い枝々にも雪はとどまり、白い光を心細げに反射している。

平日の昼過ぎ。
まだ子どもたちは学校から帰ってきていないのか、そして幼い子供とその母親たちは暖かな家の中で遊んでいるのか、マンションの周囲にはまったく人影がない。
足跡もたった一つも残されていなくて、都会のど真ん中にもかかわらず、ひどく静かな世界がそこにあった。

いつもなら聞こえてくるメイン道路の喧騒も、車が走れない分、不気味なほど沈黙を押し通している。

さすがの彼女も、これほどの雪を見るのは久しぶりのことだった。
この雪が解け始めることを思うと気が重い。
道はぬかるみ、長靴をはいたクンホは喜んでそのべちゃべちゃぐちゃぐちゃの中に駆け込んでいくだろう。

「こっちへいらっしゃい。大丈夫よ、溝なんかないから。
でも、段差だけは気をつけてね」

頬に痛いほどの空気の中、トゥエンが二人を誘ったのはマンションの前にある小さな公園だった。
日和がよければ、小さな子どもを連れた若い母親たちがいつも遊んでいる場所だった。
仕事が休みのときは、トゥエンもクンホの手を引いて、そんな母親たちの仲間入りをすることもある。
けれど、さすがに今日は誰もいない。

ベンチも砂場も一つしかないブランコも小さなジャングルジムも滑り台も、すべてが雪に包まれてうずくまっている。

「ま~ま、ぶらんこ」

お気に入りのブランコを指さして白い息を吐きながらクンホがねだるが、トゥエンはちょっと睨むだけで制した。
クンホはほんの少し細くてきれいな眉をひそめて口を尖らせたが、そのままリュウにすがる。

「ひょん、ゆきだるま~」

リュウは公園の真ん中にたたずんでいる。
クンホ同様、白い息は吐いているが、その緩やかさは雪の白さに瞬く間に溶けていった。
用心に用心を重ね、ジンウのごっついブーツをはかせてマフラーでぐるぐる巻きにして連れだしたのだが、そんな恰好をしていても彼はひどく端正だった。

「リュウ、振り返ってごらんなさい」

トゥエンの言葉に、彼はいぶかしげに振り返った。

マンションのエントランスからリュウの足元まで、三つの足跡。

小さなクンホと細いトゥエンのブーツ跡。
そして、大きなリュウの足跡。

「真っ白な世界だけれど、ほら、ちゃんとあなたは足跡を残したわ。
どう?」
「どうって・・・」

リュウの戸惑いそのままに、口元で白い息が乱れる。
うふんと、トゥエンは微笑んだ。

「それにね」

彼女は傍らのジャングルジムにジャング歩み寄ると、カラフルなパイプに積もる雪を指で払い落した。

「ほら、雪の下にはね、こんな鮮やかな記憶が隠れているの。
真っ白にしか見えない世界だけれど、包み込んでいるものはとても大きくて深いのよ。
同じよ、あなたの中にも、ちゃんと24年間は残っているわ。
今は見えなくても大丈夫よ。
あなたを支え、あなたをここまで創り上げてきたものがあなたの真っ白な記憶の下には眠っている。
それが見えなくてつかめなくて、あなたはもどかしいし、不安でしょう。
今、この雪は指で払えたけれど、あなたの中の雪を払い落すことはできない。
でも、あなたのご両親をはじめとするご家族の中には残っているのよ」
「トゥエンssi?」

自分の手にすがってぴょんぴょん跳ねているクンホを見て微笑んだ後、リュウはその母親を見返した。

「リュウ君、私は思うのよ。
もし、クンホが私のことを忘れたら、どうしようって」
「・・・」
「たった2年少ししか生きてないクンホだけれど、ジンウや私は、そしてこの子の祖父母たちは、あふれるほどの愛情を注いできた。
あなたの場合は24年間。
特に、あなたは高校入学と同時に実家を離れている。
どれほどご家族はあなたを想って、心配して、愛していたかしらね」
「トゥエンssi」
「でも、ご両親はあなたの手術を決心された。
それはあなたを愛しているからこそよ。
その勇気とあなたへの愛を、私は本当に尊いと思う。
不安になったら、ご両親のもとに帰ればいいのよ。
そこにあなたの24年間はあるわ。
ご両親は、あなたの24年間を自分たちの中に引き受けてあなたの新しい人生にかけたんですもの。
あなたはそれに支えられてこれからも生きてゆける。
真っ白な記憶の中にあなたがこれから新しい色をつけていけばいいんだもの」

「ひょ~ん」

自分の足元で仔犬のようにはしゃぎまわるクンホをゆっくりと抱えあげて、リュウはトゥエンに向きあった。

「・・・トゥエンssi。両親は、僕を扱いかねている」
「馬鹿ね~~~~、そんなことあるはずないじゃないの。
甘えてごらんなさいな。甘え方なら、うちの息子が教えてくれるわよ。
この子くらい甘え上手な子どもはいないのよ。
この子がね、『あじゅんま~』なんて言いながらすり寄っていけば、こ~んなマッチョな大男だって、デレデレしちゃうんだから」
「男の人・・・に、アジュンマ?」
「ああ、いいのよ、気にしないで。そういう人もいるってことよ。
いつか紹介してあげるわ。
悩みながら、それでも、そんな自分を肯定しながら生きている人よ」

不可思議な表情をしているリュウに微笑みかけて、トゥエンはその頬に指を伸ばした。

「リュウ、あなた、あたたかいわ。
こんな真っ白な雪の中にあっても、あなた、とってもあたたかい。
ねぇ、生きているんでしょ。いっぱい足跡を残しなさい」

ね?と、トゥエンが微笑んだ時、カシャ!と乾いたシャッター音が静かな中に響いた。

「あら、ジン!」
「あら、じゃないよ、トゥエン」

ジンウがカメラを構えてそこに立っていた。
咎めながらもしっかりとスリーショットは撮っていたらしい。

「リュウを・・・」
「僕が甘えたんです、ジンウssi。真っ白な記憶の中を歩きたいと」

あらん。
トゥエンが口の中でつぶやいたのが、すぐ傍らにいたリュウの耳には届いた。彼はちらりと共犯めいた微笑みを口元に浮かべると、すぐにジンウへと視線を返した。

「すみません。もう満足しました。暖かい部屋の中に帰ります。
おいで、クンホ。ゆきだるまは今度にしよう」

リュウはクンホの手を取るとマンションのエントランスへと歩き出した。
自分の傍らを通り過ぎてゆくリュウを目線だけで見送りつつ、してやったりの微笑みを浮かべる妻を見直す。
それから、彼女へと歩み寄った。

「トゥエン?」
「あの子は賢明な子よ、ジンウ。朝から雪で覆われた街を眺めて、つぶやいていたの。
『僕だけじゃない、みんな真っ白な記憶の中にいる』って。
でも、自分だってこの真っ白な雪の中に足跡を残せると知って、安心したみたいね」

トゥエンの視線をたどると、リュウとクンホの足跡が、また雪の上に続いている。
二人は仲良くエントランスに辿り着き、階段の上で楽しげに足踏みをして靴底についた雪を落としている。
クンホの口から吐き出される息が大きく乱れて、ただの足踏みなのに、彼がとても喜んで足をバタバタさせているのが分かる。
息子の楽しげな姿を見て、トゥエンも口元をほころばせた。

「今夜も外泊、OK?」
「え、ああ。薬だけは忘れるなとヨンスにくぎを刺された。
ドクターもあと一泊なら大丈夫だろうと。今夜も早めに寝かせないと」
「了解」

トゥエンはそう答えながら歩き出す。
ジンウはエントランス前の二人をファインダーの中に納めると、妻に続いて歩き出した。




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