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「覇王の丘(完結)」
覇王の丘 外伝

若樹の季(とき)・後編 【覇王の丘 外伝】

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〈後 編〉 

数日後。
ソファンはまた重々しい調子で、リェンに畳み掛けていた。

「年が明ければそなたは22歳となる。
来年中には、高句麗の国母を世に知らしめたい。
ケエル郡からは姫を・・・という申し出がきておる」
「ご無用」
ひとことでリェンは切り捨てる。

「民のことを思えば、そなたのわがままは通らぬ」
「わがままと申されますか」
「当然ではないか。いつまでも太子が生まれねば、それは民に対する不幸だ」
「私は、好きな女性と一緒になりたい」
「それがわがままだと申すのだ」
「父上や伯父上は好きな女性と一緒になれたのに、私には無理だと申されるのですか」
「ヤンアイはもう戻らぬ!」

ぴしりと、ソファンに言われ、リェンは、がっと目を見開いてソファンをにらんだ。
そのリレイ似の美しい瞳に一瞬の憎しみが燃え上がるのを、ソファンはしっかりと認めた。

「・・・リェン、もう一度言う。ヤンアイは、私の妻はもう戻らぬ。
そなたの腕の中で身罷ったのだ。そなたにはそなたの人生がある。
ヤンアイのことはもう忘れ去るがよい」
ソファンの冷静な言葉に、リェンは悲しみにも似た怒りを感じていた。

「伯父上。伯父上は忘れられると?」
ソファンは、せせら笑った。
「なぜ私が自分の愛しい妻を忘れなければならない?」
「では、私が・・・」
「ヤンアイは私の妻だといっておるのだ!
そなたがいつまでもヤンアイを忘れられずに一人身でいることは、ヤンアイにとっても迷惑だ。
そなた、妻に言われたのであろう?
高句麗を守り、高句麗を大きく豊かにすることがそなたの役目だと。
にもかかわらず、そなたはいまだ一人で拗ねておる。
ヤンアイも嘆いておろうぞ」

ぐっと口元を引き締めて、若い王は老獪な伯父から視線をそらした。

「リェン。そなたの后候補はいくらでもいる。
その中から特に美しい娘を選ぶことも、心根の優しい娘を選ぶことも、そなたにはできるのだ」
「伯父上」
「なんだ」
「・・・私は、伯母上と結婚したかった」
「たわごとを。ヤンアイは私の妻だ。
昔も今も、私のたった一人の妻であることに変わりはない」

言い捨てると、ソファンはリェンを残して大広間をでた。
いつもいつも、リェンにばかり先に出て行かせてたまるかと伯父は思っていた。

タムドクもいい加減、わがままな王であったが、愛情いっぱいに育ったリェンはそれに輪をかけているとソファンは思う。
この2年、タムドクの死により揺らぎそうになっていた高句麗を守り通したその手腕にはさすがのソファンも舌を巻いたが、しかし素のリェンは、まだまだ幼い若者だった。
四神が甘やかしすぎたか・・・と自身をも振り返り、ソファンは苦い思いにとらわれた。

彼は執務室に入ると、先に集まっていた家臣の中にエンウを探した。
苦々しい顔をしているソファンを見て、エンウは笑い出した。

「またリェンを苛めてきたか」
「あのやんちゃな王は、聞く耳など持たぬ」
「天下の朱雀、ソファンを翻弄するなど、行く末が楽しみではないか」
「愚かなことを。タムドクが嘆く」
「なんの、タムドクもつぶやいておろう。兄上の薫陶がよろしいからだと」

ソファンとエンウのやり取りを聞くともなしに聞いていたほかの家臣たちは、思わず噴出した。
特に大きな声を立てたのはオントだった。
ソファンににらまれても、オントは笑い声をとめることができない。

お互いの子どもが結婚し、より近しい間柄となった今、オントはソファンに対する遠慮はなかった。
カンジャクはソファンの妹と結婚し、彼を「兄上」と呼ぶ以上、少しは気遣いも見せるようになったが、オントにそれは通用しない。

「ソファン、そなた、リェンに遊ばれているのか?」

オントの遠慮のない言葉に、また執務室の中の笑い声が高くなる。
ただ一人、ソファンだけが苦虫をつぶした表情をさらに深め、さらに周りの笑い声を誘っていた。
その笑い声の中で、ソファンはエンウにだけ聞こえるようにささやいた。
「エンウ。私はケエル郡に行ってくる」
「それもよかろう」


翌日、執務室でエンウはリェンのそばにあった。
今日、ソファンは姿を見せない。

「リェン様。ソファンがへそを曲げたようだ」
「ソファン伯父上が?」
「そなた、ことごとくソファンに逆らっているようだな」
「そんなことはございませぬ。たた結婚などしたくないと申し上げただけです」
「ヤンアイ殿が忘れられぬか?」

エンウの言葉に、リェンは首をふった。
しかし、言葉はない。

「リェン。ソファンの苦衷を察してやれ。
彼は、タムドクにそなたを任された。
同じ女性を愛した男として、ソファンは誰よりもそなたの心がわかっておろう。
だからこそ、一日も早くそなたに優しい伴侶を見つけてやりたいと思っているのだ」
「エンウ伯父」
「ん?」

リェンは忍び込んでくる秋の寒さに閉じてあった開き戸を大きく開け放った。
エンウはその後姿に、タムドクの面影を見る。
彼もよくその場所に立っては、広大な宮庭を見るともなく眺めていた。

「私に、・・・私に誰か女性が愛せましょうか?」
「リェン。安心するがいい。そなたは多くの人間に愛されている。
それはとりもなおさず、誰かを深く愛せるということだ」
「私は・・・ヤンアイ様が好きだった。
たった13ではありましたが、私は伯母上を愛しておりました」
「だからこそ、そなたは生きねばならぬ。
ヤンアイ殿の命も、そなたはその体の中に抱いている。
リェン。ヤンアイ殿はそなたを守って逝かれた。
その命を大切にせねばならない」

リェンは振り返る。
諦めともつかぬやや淋しげな表情に、エンウは、甥が一つだけ歩み寄ったことを知った。

「伯父上」
「なんだ?」
「ソファン伯父にお伝えください。
リェンは、ソファン伯父上のお望みどおり后を貰いましょうと。
ただし」
「ただし?」

眉をひそめて問い返した伯父に、リェンはいったん口を開きかけ、それから思い返したように唇を引き締めた。

「何でもない。
ソファン伯父とエンウ伯父で私に、高句麗にふさわしい后をお選びください。
リェンは、お二人の意向に従いましょう」
「リェン」

自分の名の中に咎める響きを込めたことをリェンは感じたが、そ知らぬふりをした。

どうせ、自分の望みは通らない。
ヤンアイは亡くなり、あの少女、あのセファと名乗った少女も、まもなく嫁ぐと言っていた。

高句麗王の后は、代々ケエル郡の豪族の娘と決まっている。
父と伯父が異例だっただけだ。

「もう一度、お会いしとうございます」
と、自分の胸の中でつぶやいた少女は、もう他の誰かの胸に抱かれていることだろう。

大きな目に好奇心をいっぱいに輝かせていた少女。

しかし、それも幻だ。

高句麗という偉大なる国の王であるというのに・・・。

拗ねるように横を向いてしまったリェンを見守りながら、伯父はひそかに微笑んだ。

数日、ソファンは姿を現さなかった。

やっと高句麗王の御前に現れた伯父を、リェンは腹立たしく思いながらねめつけた。

「ソファン伯父。
政務を放り出し、あまつさえ私に黙って姿を消すなど、許されることだとお思いか」
「寛大なお心でお許しいただきたく・・・」

恭しく頭を下げながら、しかし、その言葉はさほど自分の行為を恥じているようには思えなかった。
結局、自分は高句麗王でありながら、父王の重臣たちであった四神に侮られていると、あらためて思う。
その上、この4人の重臣はことごとく自分と親戚であるのだ。

父王はなんと面倒くさい人たちを残してくれたのか。

若いリェンには、老獪で老練な四神は一番頼りになる存在であると同時に、一番頭が上がらない鬱陶しい存在でもあるのだとあらためて思う。

最近、ますます、4人のおじたちは、手に負えなくなってくる・・・とリェンは思う。

自分から不愉快そうに視線をはずしたリェンを見て、ソファンはひそかにほくそえんだ。
傍らを見ると、居並ぶ家臣の中から、エンウが共犯の微笑を持って自分を見ている。
ソファンはかすかにうなずくと、不機嫌な王の前から退いた。

執務室で待っていると、不機嫌な表情を貼り付けたままリェンが入ってきた。

「伯父上、どこに行っていた」
前置きもなく、リェンはソファンを責めた。
「そなたにはもう私はいらぬだろうと思って、隠居すべき終の棲家を探してまいった」
ソファンの皮肉に、高句麗王は、またにらみつける。
しかし、エンウをはじめとする家臣は、この勝負の行方を知っている。
残念ながら、まだリェンには勝ち目はない。

「それよりもリェン、ケエル郡のチョン家との縁談を進める。異議はないな?」
いきなりのソファンの言葉に、リェンは眉を上げた。
「そなた、エンウに申したであろう。私たちの意向に沿うと。話は決めてきた。
姫には間もなく、一度、お目見えのために高句麗王都までお出まし願う。
正式な入后は半年後だ。さっさと子でも生せ」

ソファンに似つかわしくない乱暴な物言いに周囲の者は驚いたが、当の本人は相変わらず怜悧な表情を崩さない。
「伯父上」
「異議は許さぬ」
「そうではない」
「ではなんだ」

リェンは一度口を開きかけ、それから、そこに居並ぶ家臣たちの数に気付いて口を閉じた。

「何だ、はっきり申せ。そなたは高句麗王だ。遠慮することはない。
ただし、このたびの縁談に異議は許さぬ」

同じ言葉を三度も繰り返す伯父に顔をまじまじと見つめ、リェンは、今さら抵抗することはできないのだと悟る。
何よりも腹立たしいことに、この伯父に対してリェンは親に対するよりも頭が上がらない。

「聞くところによると姫は、見目麗しいだけではなく、学問にも秀でておいでのこととか。
チョンssiは、姫が娘であることを口惜しく思うほど、聡く賢いとの噂も高い。
リェン、そなたにふさわしい女性であることは間違いない」

ソファンとリェンのあいだに険悪な空気をなだめるように、エンウが穏やかに口を挟んだ。

「それに加えて・・・」と、エンウは微笑んだ。
「最近、この姫は、馬術と武術の稽古にも明け暮れているという。
高句麗の国母として、文武両道に優れているとはこれほど喜ばしいことはない」

「馬になど乗れなくても結構」

エンウの言葉を跳ね除け、リェンは目の前で憮然と立っているソファンをまたにらんだ。
しかし、やがて、ふっと肩の力を抜くと、まずエンウの穏やかな表情を見て、それから再びソファンに視線を移した。

「ソファン伯父。私は、誰かを愛することができるのでしょうか?」

高句麗王の無邪気すぎる問いかけに、周囲の家臣たちは一瞬、息を呑んだ。
聞いてしまったことを悔やむ家臣が多いことにソファンは気付く。
同じ問いかけを先に聞いたことのあるエンウは、まだこの若者が迷っていることを知った。
しかし、ソファンは相手にしない。
先ほどと同じ、聞きようによっては突き放しているのではと思えるほど冷たい口調で口を開く。

「リェン。焦ることはない。生涯をかけて緩やかに愛情を育てていけばよいのだ」

それだけを告げると、エンウにその視線だけで合図をして執務室を出て行ってしまった。
あとに残ったエンウは、目の前でまだ迷い続ける青年を見守る。

「リェン、后となる姫の名前を聞かずともよいのか?」
「見えるときに、自ら名乗っていただきましょう。それまで必要はございませぬ」

リェンの固い言葉に、エンウはふと微笑むと、やがて、彼もまた執務室をあとにした。

一月後、明日は后候補の姫との謁見が控えているという日、リェンはまた父王の碑の前にいた。
すでに秋の日は深く、肌寒ささえ感じる風にさらされながら、リェンは大きな碑を見上げていた。

その背後から、軽やかなひづめの音が響いてくる。
王の背後に馬で乗り付けてくるなど、無礼千万と振り返ったリェンは、そこに色づく山々よりもなお華やかな虹裳を身につけた少女を見つけ、思わず声を上げた。

「セファ!」
「リェン様、いかがでございます?私、馬を走らせて参りました」

まだ弾む息を隠そうともせず、セファは馬上から楽しげに叫んだ。
慌ててそばに駆け寄ったリェンがその手綱を取ると、彼女は身軽に馬から降りた。

「これでも私をつまらぬ女だとお決め付けになりますか?」
高らかに宣言するように言われて、リェンは自分が気おされていることに気付く。
しかし、それは不愉快ではなかった。

「そなたはどこぞの男に嫁いだのではなかったのか?」
「私は、初めてお会いしたあの日から、リェン様のおそばに参ると決めておりました。
ですから、リェン様のお望みのように、馬も剣術も習ってまいりました。
どうぞ、私をおそばに置いてくださいませ」
「しかし・・・私は・・・」

明日には、自分は后となる娘と会うことになっていた。
セファの望みをかなえることはできない。
それでは側室に・・・ということになってしまう。

「リェン様。お答えを」

大きな目を見開き答えを迫る愛らしい少女を、リェンは見下ろした。
そして、ためらわずにその手をとり、自分の口に寄せる。

「セファ。そなた、何があっても私のそばを離れぬか」
「はい」
打てば響くような返事に、リェンは体の底からこみ上げてくる喜びを抑えきれない。
「よし!」

リェンはセファを抱き上げると、疾駆の鞍の上に乗せた。
そして、自分も飛び乗る。

そのまま、セファの馬の手綱を引き、リェンは疾駆を王宮まで走らせた。

王宮内は明日の未来の国母の謁見を控え、雅な装飾が施されていた。
その中をリェンは駆ける。
美しい少女の手を引き、端整な顔を紅潮させて長い廻廊を翔けるように走る若き高句麗王を見て、家臣や女官たちは大騒ぎになった。

「ソファン伯父!エンウ伯父!四神の小父上方!」

執務室に駆け込むと、リェンは声を上げる。
その場に居並ぶ家臣たちは、いつになく高揚したリェンの声に一様に目を丸くして振り返った。

その視線の中で、リェンは高らかに宣言する。

「私は明日、后となる姫とはお会いいたしませぬ。私の后は、この人です。
この人以外の方とは、結婚いたしませぬ!」

おおっと、家臣たちがざわめいた。

その中で、まずオントが目を丸くして一歩二人に近づく。
「リェン王。そなた、本当に父にそっくりだな」
カンジャクが手にしていた書付を放り出すと、「明日のお迎えの準備は終えておるか?」と、そっと近くの者に問いただした。
エンウは笑い出し、部屋の一番奥から、ソファンが重々しい足取りで前に出てきた。

その厳しい視線にさらされても、リェンはたじろがなかった。
怯えるように自分の影に隠れたセファを守り、ソファンの前に立つ。

「ソファン伯父。前言を撤回いたします。私は私の縁談に異議を申し上げます。
高句麗王の后は、他の誰でもない、私が、私自身が決めます。
他の方の意向など、たとえソファン伯父やエンウ伯父のお考えでも従うつもりはございませぬ。
高句麗王は私なのですから」

はっきりと言い切ったリェンをにらむように見ると、ソファンは、視線を彼の後ろに隠れるセファに移した。
そして、一言。

「セファ姫。お戯れが過ぎますぞ」

え・・・と、リェンは白々としたソファンの顔を見て、そして自分の背後にいるセファを振り返った。

「リェン。この女性が、チョンssiのご息女、セファ姫だ。
明日、そなたに拝謁するはずだった姫だ」

苦々しげに言うソファンの言葉に、リェンはもう一度ソファンを見る。
そして、背後に守っているはずのセファを振り返ると、彼女は、ちょっと小首をかしげ、「ごめんなさい」と、小さくつぶやいた。

「確かに、わがままでやんちゃなそなたにふさわしい后のようだ。
もう私たちの手には負えん。リェン、もう一度言い渡す。
生涯をかけて、穏やかに二人で愛情を育てていけばいいのだ。
これ以上、私たち年寄りを翻弄するな」

ソファンの言葉に、まず四神が笑い出し、執務室は高らかな男たちの笑い声に包まれた。

その夜、王宮は賑やかな宴の声に包まれていた。
1日早まった宴だったが、準備は怠りなく進められていたゆえに何の支障もなく華やかな宴は繰り広げられていた。

その中で、近い将来迎え入れられる后は高句麗王のおそばにあり、初々しく頬を染めていた。
卓の下で、その小さな手をリェンがしっかりと握り締めているのを、誰もがほほえましく思いながら見ない振りをする。

四神は並んで座り、その二人を眺めていた。

「やれやれ」
ソファンが珍しくため息をついた。
「リドウ様やフリツ様のご苦労が、今更ながらに身にしみるぞ」
「ああ、確かにな。
あのお二人は、タムドクのおそばで愚痴の一つもこぼさずに勤めておられた。
私たちには真似もできぬ」
エンウがしみじみと杯を干した。
しかし、その杯をソファンに渡し、エンウはにやりと笑った。
「嘆くな、ソファン。さすがタムドクの息子と、ほめてやれ」

エンウの言葉に、ソファンはうんざりと隣のオントを見やった。
間もなくソファンとともに祖父となる(つまり、オンフンとユファのあいだに子どもが生まれる)オントは、先ほどから笑いが止まらない。
「いや、済まぬ。あの姫でこそリェンをやりこめることもできるだろう。
私たちの役目も半分は終わったということだ」
「しかし、ソファン、あの姫がヤンアイ殿同様、戦に出ると言い出したら、なんとする?」
カンジャクの言葉に、ソファンはぎょっと姿勢を正した。
「ヤンアイだからこそできたこと。
手習いの域を出ぬ姫に、そんなことができるはずもない」
「むきになるな、ソファン。
カンジャクは、ヤンアイ殿に今もほれているお前をからかっているだけだ。
まぁ、飲め」
エンウはソファンが持つ杯になみなみと酒を注いだ。

まだオントは笑いをこらえきれずにいる。
カンジャクもにやにやとソファンを見ている。
ソファンはその二人をにらむと、「まぁまぁ」というエンウの言葉に促され、ぐっと杯を空けた。


一段高い場所にあり、リェンは喜びにあふれながら酒を酌み交わす家臣たちの姿をゆったりと見回した。
下座では、母は穏やかに微笑みながら自分たちを見守っているし、妹たちは興味津々と言った風情で未来の義姉を見ている。

そんな大広間を眺めて、わが身を包み込む幸せをかみ締めながら、リェンは傍らのセファをあらためてみつめる。
少女は大きな目をキラキラと輝かせ、一緒に王都へとやってきた父や従者たちのいささか心配げな表情も知らぬげだ。
本当の輿入れは半年後になるというが、リェンはもう今夜、セファを離すつもりなどなかった。

もう少ししたら家臣などは放っておいて、この握った手を離さずに自分の寝所にさらって行ってしまおう。
誰が反対してもかまうものか。
私は高句麗王なのだ。
私に逆らえるものなどいるはずはない。
ソファンの言うように、1日も早く子を生し、内外ともに高句麗の安泰を知らしめるのだ。

しかし・・・と、リェンはあらためて四神の席を眺めた。
先ほどからあの老獪な4人の年寄りどもは、自分たちだけで楽しげに騒いでいる。

全く・・・とリェンは思う。

セファ姫が自分の后候補ならそうと早く言えばいいものを。
おかげで自分はやきもきと無駄な時間を過ごしてしまったではないか。

結局、父王の手のひらの上で自分は騒いでいるだけなのか・・・と、リェンはいまだに自分の上に大きく影を落とす父王を思った。

しかし、それもよい。

だからこそ四神たちは、自分にとって、高句麗にとって一番ふさわしい選択をしてくれた。

リェンは、握っていた小さな手をまた強く握り締めた。
セファがリェンを見て、にっこりと微笑む。

「セファ姫」
「はい」
「明日の朝は早いぞ。あの木の下まで一緒に馬を走らせよう」

リェンの言葉に含まれた意味に、セファはたちまちに頬を赤らめた。
しかし、ためらいはしない。

「疾駆に乗せてくださいますか?」
「疾駆がやきもちを嫉くかも知れぬ」
「私のほうこそ、疾駆がうらやましゅうございます。
いつもあなた様のおそばにいられる」

お互いに視線を絡めあい、睦まじく語り合う若い二人を、四神は温かい目でみつめる。

「タムドクが喜んでいることだろう」
エンウの感慨深げな言葉にカンジャクとオントもうなずく。
「ああ」
ソファンのため息のような同意の声に、4人は同じように安堵の微笑を浮かべた。

秋の夜は長く深い。

高句麗の王宮にはいつまでも宴の声が響いていた。
                                了



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